2012年2月22日
by T.Yoshi
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POY スポーツ・マルチメディア入賞作発表

Picture of the Year コンテスト、待望のマルチメディア部門の最初は、スポーツ部門。このカテゴリーの入賞作が発表された。
Pictures of the Year International, Sports Multimedia Story

で、1位はこれ。
“Uppercut”

シリコンバレーにある「ジェントルマンズ・ファイト・クラブ」という、ブラッド・ピットが出た映画を地で行くような、趣味で喧嘩を楽しむ人たちのクラブのドキュメント。仕事を終えたシリコンバレーのエンジニアたちが、夜な夜な集まっては「趣味の喧嘩」を楽しむという摩訶不思議なクラブを取材している。よほどストレスがたまっているのか、一日コンピュータに向かい合っているとおかしくなるのか、なんとも信じがたい光景が展開される。

とあるガレージにこのクラブはあるらしい。創設者はソフトウェアエンジニア。殴り合って、みんな仲良くなるらしい。いきなり防具もつけない喧嘩の風景があるかと思えば、誇らしげな傷の見せ合い、ヘルメットをつけてキーボードで殴る、ホームセンターで調達した折たたみ式椅子で殴る、等、もう支離滅裂。
テンポのいい場面展開と、白黒映像、モノローグが何とも言えず不思議な雰囲気を作り、こういう世界が存在することに、思わず「口あんぐり」である。単なる映像の強さだけでなく、こういう驚きの題材を選んだジャーナリスティックな感覚が1位の原因ではなかろうか。
制作は、Zackary CanepariとDrea Cooperのお二人で、”California is a Place “というカリフォルニアをさまざまな映像作品で見せているウェブサイトをほとんど二人で作っているようだ。(※今回作品で初めて知ったが、このサイト、他にもいろいろな映像があって、なかなか面白い。いずれ詳しく紹介したい)

さて2位。

デトロイトの歴史ある新聞、”Detroit Free Press”のEric Seals氏のストーリー。バスケットボールの試合で突然の心臓発作で倒れた高校生、ウェス・レナード君の話。体育館の壁に掛かっているべきAEDは、子供がいたずらするからという理由で倉庫に保管され、彼の元に届いたときには電池切れだった。そして、レナード君は帰らぬ人となる。記録映像とチームメート、コーチ、関係者へのインタビューを交え、彼を失ったチームがその後優勝するまでを追った。アメリカの小さな町のコミュニティの様子をよく描いている。新聞記事(テキスト)の方は、母親が息子の死にもめげず、AED設置のための活動を行っていることが書かれていて、これも泣かせる話だ。
(※実は制作者のEric Sealsは筆者の友人であり元同級生なので、個人的にもうれしい!おめでとう!!)

3位は、カリフォルニア州サンディエゴの地方紙、”The San Diego Union-Tribune “のJames Gregg氏の、”Dancing with the Devil.”「悪魔とのダンス」とは、牡牛のロデオに挑む男達のストーリーである。その荒々しさを伝える迫力ある映像だ。

その他の入賞(Award of Excellence)は以下の二つ。

こちらはボストンの伝統ある新聞社、”Boston Globe”紙のDarren Durlach & Sopan Debによる、NBAの殿堂入りしたバスケットボール選手、ビル・ラッセルの銅像をボストンに作ろうという物語。”Bill Russell to get a statue in Boston.” ボストンのバスケットボールチーム、セルティックスで偉大な功績を残した黒人プレーヤーで、公民権運動の時代に毅然と人種差別に反対し、オバマ大統領から勲章も受けた人物。彼の歴史を振り返る、地元紙ならではのストーリだ。


最後は、アフリカのウガンダの貧困にあえぐ小さな町で、チェスの才能に目覚めた15歳の女の子の物語、”Phiona Mutesi – Queen of Katwe.” 制作はフリーランスのStephanie Sinclair氏(所属はドキュメンタリーフォトのエージェンシー、VII[セブン])。スポーツカテゴリーにあるのは、これがスポーツネットワークのESPNの番組として作られたものであり、このチェスを広める活動が、ウガンダのスポーツ・アウトリーチ・プログラムの一貫として行われているからであるらしい。ESPNはときどきこういう素敵なヒューマンストーリーを作る。

以上の作品、このようにすべてウェブ上に公開されており、そして、すべて埋め込み可。だから、私もこうやって紹介できるし、世界中いろいろな人がいろいろな言語で紹介するに違いない。どんどんシェアされて広まっていくであろう。
5作品のうち3つまでが新聞社の制作であること、さらに1つもフォトエージェントの作品であることも、これからのメディアの有り様を示すようで興味深い。

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Pictures of the Year 審査始まる
POY, World Press Photoの震災写真
涙無くしては見れぬ・・ Good job, ESPN!

2012年2月17日
by T.Yoshi
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オバマの予算案、どう見せます?

データを使って事象を説明するのはData Journalismとも言われるが、さてデータが複雑になってくると、それをどう見せるかがジャーナリスト、エディターの腕の見せ所だ。

オバマ大統領が2013年度の予算案(予算教書)を発表した。
さて、どこが増えて、どこが減っているのか?
文字やグラフィックを駆使していかにわかりやすく説明するか、ということを超越して、マルチメディアジャーナリズムの世界では、これまでには考えもつかなかったようなプレゼンテーション方法が出てくる。

まずは以下の画面をクリックしてThe New York Timesのサイトに行き、このすばらしいインタラクティブ・グラフィックスをご覧あれ。

Interactive graphics by the New York Times

ちょっと説明すると、項目別の予算の規模が円で表されていて、それが集まって全体の予算規模を示しているのが上の図。円が大きければ予算額も大きい。緑は増額で、赤は減額、グレーは増減なし。緑や赤の色が濃くなるほど、増減の率が高い。
緑色のひときわ目立つ円は、社会保障(Social Security)と低所得者や高齢者向け医療保険(Medicare and Medicaid)で、予算の規模も大きいが数%の増額になっていることがわかる。円にマウスオーバーすると予算額と増減割合が出てくる仕組み。

また、見方を変えることもでき、省庁別に見ると以下のようになる。

Interactive graphics by the New York Times 2

Defense(国防予算)のところに赤丸が集中しているのがわかり、ニュースで伝えられている通り、これが予算の削減対象となっているのが一目瞭然である。

これはd3.jsという、フリーのjava scriptのライブラリーで公開されているソースを利用して作ったらしいが、なんとも見事なグラフィックスである。ウェブならではの解説方法である。

2012年2月15日
by T.Yoshi
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POY, World Press Photoの震災写真

ニュース写真のコンテストには、常にちょっとした後ろめたさを感じてしまう。それは人の不幸がその題材になっていることが多いからだろう。だから、受賞したからといって手放しに喜ぶ気分になれないのは、どんなニュースフォトグラファーにも共通する気持ちだと思う。自分の撮影した写真が少しでも社会の役に立つはず、という信念がないと勤まらない仕事でもある。

さて、世界的に名声の高いニュース写真のコンテストで、311震災の写真が多くの賞を受賞した。その中でも、毎日新聞社の手塚耕一郎カメラマンが撮影した津波来襲の瞬間の写真が多くの賞を受賞した。津波の映像は多くあったのだが、写真は意外と少なかったのだ。

POY winner tsunami photo

沿岸の防風林を越えて押し寄せる大津波に、一気にのみ込まれる住宅街 (宮城県名取市、3月11日午後3時55分、撮影:手塚耕一郎〔毎日新聞社〕)

上記の画面は、POY(Pictures of the Year International)のもので、このニュース部門に特別に設けられた「Impact 2011 Japan Earthquake」というカテゴリーで1位となった。また、オランダのWorld Press Photo(国際報道写真コンテスト)のスポットニュース部門で1位(※この写真を含む7枚組)、さらに、2011年の日本新聞協会賞を編集部門で受賞している。
(※POYの写真クレジットは、「Mainichi/AFLO/Zuma Press」で撮影者のクレジットがないが、World Press PhotoはKoichiro Tezuka, Mainichi Shimbunのクレジットがある)

国内外の賞をこれだけ一枚の写真が独占するのは珍しい。震災が大きなニュースだったことはもちろんだが、住宅街に襲いかかろうとする大津波の不気味さと恐ろしさを見事に捉えた手塚カメラマンの仕事に敬意を表したい。

動画と違い、写真はじっと見つめることができる。大きな写真なら特に、ディテールを読み取ることができる。
画面上部に見える青い海は見慣れた姿であるが、そのすぐ下には、見たこともないような波しぶきと、その力に翻弄される防風林、そしてその下(手前)には、津波に飲み込まれつつある住宅や、数秒後には同じ運命をたどるであろう家や車の列、ビニールハウスがある。一番手前はニッポンレンタカーのオフィスであろうか。そこには自動販売機が見える。そんな日常のありふれた風景が、画面上部から迫ってくる津波によって、このすぐ後にはその猛威の中に消えていったかと思うと、胸が苦しくなる。写真に捉えられた濁流のディテールはとても不気味だ。

2011年10月号の「新聞研究」(No.723, “取材で感じた報道写真の役割” pp.15-18, 日本新聞協会発行)に手塚カメラマン本人が、この写真について詳しく語っている。それによれば、撮影の状況は以下のようなものであった。

当日は別の取材で東北地方をヘリコプターで空撮中。取材を終え、仙台空港に帰還しようと海上を飛行していたところで、地震の一報を聞いた。この時点で燃料はあと1時間半ほど。そのまま地震取材に入り、仙台上空へ。地震発生後約1時間経った3時40分過ぎ、給油ができないかと仙台空港に着陸。しかし空港は地震のため閉鎖中。電話も通じず、空港事務所でも給油対応は無理とわかる。ヘリのエンジンは動かしたまま。この時点で残燃料は30分。無線で津波が迫っていることを知り、すぐに離陸。結果としては、ヘリのエンジンを止めなかったこと、30分の残燃料にも関わらず離陸したことが、この写真につながった。この写真が撮られたのは、その離陸直後である。
その後、ヘリは午後4時20分に付近の工場空き地に緊急着陸。すべての通信機器は「圏外」で、すぐに写真を送信することはできなかった。生きていた公衆電話からタクシーを呼び、仙台へ向かうタクシーの中から携帯電話のメール機能を利用して写真を送信することができ、翌日の新聞に掲載されたそうだ。

この写真は世界中に配信され、津波の恐ろしさを伝える最もインパクトのある写真として大きな影響を与えた訳だが、その背景には、毎日新聞が2010年10月から始めた共同通信と「合同航空取材」体制があることが、前稿を読んでわかった。経費節約のためであろうが、毎日新聞と共同通信のカメラマンが週交代でヘリ番を担当し、撮った写真は両社が使うことができる仕組みらしい。毎日新聞だけならこれだけ世界に広まることは無かったかもしれないが、世界の通信社にチャンネルを持つ共同通信によって広く国外に配信されたことが、この写真の認知につながったともいえる。
大震災と津波の猛威を忘れぬため、将来への教訓を伝えるため、人々の心に刻まれるイメージとして受け継がれていくだろう。

その他、Pictures of the Year, World Press Photoの賞での震災関連の写真の受賞は以下の通り。

▼ World Press Photo
手塚耕一郎(毎日新聞), Spot News (Stories)(7枚組), 1位
Paolo Pellegrin (マグナム), General News, (Stories)(12枚組), 2位
Yasuyoshi Chiba (AFP通信), People in the News (Stories)(12枚組) 1位
Lars Lindqvist (Danges Nyheter), General News (Single), 2位
Toshiyuki Tsunenari (朝日新聞), General News (Single), 3位
Denis Rouvre, ポートレート(Single), 3位

▼ Pictures of the Year International
Mainichi/AFLO/Zuma Press (手塚耕一郎:毎日新聞), Impact 2011 – Japanese Earthquake, 1位
Hiroto Sekiguchi(読売新聞), Impact 2011 – Japanese Earthquake, 2位
David Guttenfelder (AP通信), Impact 2011 – Japanese Earthquake, 3位

Impact 2011 – Japanese Earthquake, Award of Excellence(以下5名)
Mainichi/AFLO/Zuma Press (手塚耕一郎:毎日新聞)
Carlos Barria (ロイター通信)
Toru Hanai(ロイター通信)
Q. Sakamaki (Redux)
Jensen Walker (Getty Images)

Hiroto Sekiguchi (読売新聞), News Picture Story(新聞部門), 3位, “Tsunami Aftermath”(12枚)

Yasuyoshi Chiba (AFP通信), News Picture Story(フリーランス、通信社部門), Award of Excellence
David Guttenfelder (AP通信), Global Vision Award, Finalist, “Japan’s Nuclear Refugees”(39枚)

David Butow (Freelance), Feature Picture Story, Award of Excellence, “Japan’s Triple Disaster” (12枚)