キタラ 第三話 | 音が良いには訳がある
Reasons for its rich sound
(※以下の記事は2004年7月に札幌市の観光サイト「ようこそさっぽろ」に掲載されたものです)
天井から吊るさているのが音響反射板。天井はすべて形の違うコンクリートブロック480ピースからなる
「Kitaraは音の響きがいい」
演奏家から、好評をいただく。
1997年7月にオープンした札幌コンサートホールKitara。建設構想から6年、最高の響きを作り出そうと、多くの人たちが奔走した。
大ホール2008席、小ホール453席。ホールに入って感じるのは、「木」がかもし出す雰囲気の柔らかさだ。壁面のいたるところに、北海道産のマカバ材が使われている。ホールの場所ごとに、違うカーブで設置されている。
ステージの上、天井には、巨大な鳥が羽を広げたような音響反射板が設置されている。世界的にも珍しいものだという。必要に応じて上下し、楽器から発せられた音の初期反射音を調整し、厚みのある音を作り出している。天井自体もコンクリート製。開口部が少なく、音を外に逃がさない工夫がされている。
キタラ大ホールのパイプオルガンはフランスのケルン社製
ステージ正面にあるパイプオルガンも目をひく。フランス、ストラスブールのケルン社製。4976本のパイプが荘厳な音を奏でる。Kitaraは、開館当初からヨーロッパから専属オルガニストを招き、2004年7月現在、6代目のジャン=フィリップ・メルケールが在籍する。
札幌交響楽団のビオラ奏者、三原愛彦さんは、「明らかに響き方が違う。自分のひいている音がよく聞こえて怖いくらい」とKitaraの響きを評する。
ファゴット奏者の村上敦さんは、「できた当初に比べて、響きがマイルドになっているような気がする。木の湿気が抜けたせいだろうか。ちょっと離れたバイオリンの音もよく聞こえて、とてもやりやすいホールだ」と言う。
美しい弦の響きを特徴とする札幌交響楽団。この楽団の得意とする音を最も活かすために音響設計されたホールでもある。
2003年4月から札幌交響楽団の正指揮者を務める高関健さんは、「日本一いいホールだと思う」と、Kitaraを絶賛する。
「オープン直前の音出しでKitaraに来たことがある。すごいホールができた、と思った。響きのよさで世界的に知られるホールに似ている。段差のない楽屋の使いやすさもいい。評判は世界にも伝わっていますよ」と話してくれた。
2003年度はKitara全体で計360公演、のべ35万人の聴衆が来場した。
東京出身の高関さんがおどけて言う。「このホール、東京に持って帰りたいくらいです」
(写真・文 吉村卓也 初出:2004年「ようこそさっぽろ」)